Project8 オープン・D・チューニング

9.HAIL! HAIL! ROCK'N'ROLL Part2

キース・リチャードと言えば、ローリング・ストーンズのギターリストとして人気と金を手に入れ、かなり好き勝手なことをしている。
スキャンダラスな事件も多く、”クスリ”でも度々捕まっている。
そんなキースがこの映画では、まるでロンドンあたりの真面目なビジネスマンのように見える。
自分より、さらにわがままなチャック・ベリーをマネージメントして、コンサートを成功に導かなければならないからだ。
ロックファンが大笑いした理由はこのあたりなのだが、ロックに詳しくなくてもチャックのとんでもないキャラクターは伝わると思う。

※キースはチャックのことを「ミック・ジャガーよりやっかいな相手」だとか「俺のことを殴って、殴り返されなかった唯一の男」と言っている。

圧巻は「キャロル」のリハーサル。キースがチャックの負担を減らすためにリフを弾くと提案するのだが、チャックがその弾き方に文句をつける。
チョーキングの位置はここまでだ、とやってみせるのだが、キースとたいして変わらない。
あげくのはてに「ちゃんと弾けよ」と言い出す始末。
キースはふてくされ、バンドのメンバーもしらけて演奏をやめてしまう。
それでも強引にチャックが演奏を再開すると、チャックにぐんぐん引っ張られてバンドの演奏が乗り始める。
そして最高の演奏が展開される。
キースは苦笑いを浮かべながら、まいったよって感じになる。

世の中に威張り腐った人間はたくさんいるが、多くが仕事の結果への責任をとらない。
それがチャック・ベリーは、ステージでの演奏の結果がすべて自分に返って来る。
だから、(あたりまえのことだが)素晴らしい実力が備わっている。
それで、わがままを言ってても爽快感がある。

コンサートの幕が開いてからもキースの奮闘は続く。
10日もかけてリハーサルをしたのに、チャックが別のことを始めてしまう。バンドメンバーはキースを見ている。
キースはやけっぱちになって言う、「アドリブだ!!」
ただ、そこはさすがに一流ミュージシャンが集まっているだけのことはあり、コンサートは最高潮に盛りあがってゆく。
コンサートが終わって、インタビューを受けるキースの表情がいい。(これもロックファンには爆笑ものなのだが)
ほっとして、大きな仕事を成し遂げた満足感に溢れている。
「1ヶ月は何もしない」と疲れ果てて言った。

それにしても驚くのがチャック・ベリーの若々しさだ。
声の張りも、ギターの演奏も、ステージ上での動きも、とても60才には見えない。30才と言われても何の違和感もない。
有名な”ダックウォーク”もバッチリ決めていた。

今年の3月にチャック・ベリーは来日し、ジェームス・ブラウンとジョイント・コンサートを行った。
いまは75才のはずだが、どんな演奏をしたのだろう?
行きたかったが、給与カットの身にはちと高額なチケットだったので見送った。

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