Project8 オープン・D・チューニング
特別編 俺はミュージシャンだった。(1)
チャック・ベリーがやって来た。
昨年の来日時は高いチケット代に躊躇し見送ったが、今回は行くことにした。
相変わらず給料は上がらず、生活は苦しいが、旅行するよりは安い。(そういえば、もう何年も旅に出ていない)
山積みの仕事をぶっちぎって地下鉄に乗り、ひとり赤坂見付へ。そして夜の活況には早い赤坂をTBS方面に歩いた。
開演には少し遅れるがシアトルスタイルの店に入った。何か食べなければ。なんたって、今日は立ち見なのだ。
外に向いたカウンター席で道行く人を見ながら、パンとアイスティーをぼんやり食べる。
隣に一人で座っている女が、携帯で誰かをお茶に誘い体よく断られている。ちょっと、痛い。
僕も一人で来ている。誰を誘えばいいのか見当がつかなかった。誰がチャック・ベリーに興味を持っているのか?
長い階段を上って赤坂BLITZにたどり着いた。
会場に入ると前座のO.P.KINGの演奏が始まっていた。このコンサートの為に結成された期間限定のバンドだ。
奥田民生が若い。他のメンバー(YO-KING、大木温之、佐藤シンイチロウ)もロック少年に戻っている。
難しいことはやらず、3コードのロックンロールを気持ちよさそうに演奏していた。
MCでコンサート初日の昨日、チャック・ベリーと話したことなどを言っていた。「これでこのバンドの目的は達した」そうだ。
O.P.KINGのステージが終わり休憩に入った。
あらためて観客を見回す。来たときから気にしていたが、客層が意外と若いのだ。
そして、明らかなサラリーマンスタイルがいない。スーツにネクタイって俺ぐらいじゃないのか?
いったい誰が来ているのだろう?音楽関係者とその連れの女性が中心か?
チャックと時代は近くても、これが「懐かしのグループサウンド」や「ベンチャーズ」なんかだと、明らかなおじさん、おばさんで埋まるんだろうな。
2年続けて来日し、若い客層も育っていると言うことは、チャックの音楽は普遍的な価値を持っているのだ。
やっぱり、チャック・ベリーはキング・オブ・ロックンロールだぜ!Yエイ!!
さて、フロアーの明かりが消え歓声が上がる。いよいよ、チャックの登場だ。
ニコニコしながらステージ中央にゆき日本式のおじぎ。そして、演奏が始まる。
演奏が進むにつれて、ずっと忘れていた事を思い出した。
そうなんだよ。俺は映画の人でも、会社の人でもない。
俺はミュージシャンだった。
特別編2へつづく →次へ
戻る