Project10 トライ・トゥ・リメンバー
3.プロット「トライ・トゥ・リメンバー」後編
キャサリンはアメリカのママに電話した。
辰男はどうしたのかしら?私はどうすればいいの?
ママは、自分とパパのことを話した。
パパの気持ちがママから離れそうになったこともあったわ。
でも、ママはパパが戻ってくるのがわかっていたの。
それは私たちには”共通の思い出”がたくさんあったからよ。
人生で勝ち続けることは難しいわ。
つらいときは、楽しかった頃を思い出すものよ。
キャサリンは、辰男とのことを考えてみた。
辰男と初めて会ったのは、4年前の秋、故郷のコーヒーショップで働いていたときだ。
留学生だった辰男は、午後の客のいない時間にいつも一人でやってきた。
おどおどしていて、グループ客が来るとすぐに帰ってしまう。
そんな辰男だったが、毎日来たのでキャサリンとだけは、いつしか話すようになった。
話してみると、キャサリンには辰男がとても魅力的に思えた。
いろいろなことを知っているし、ユーモアもあった。
それにとてもやさしかった。
自分を出すのがへたなんだわ。
そう思ったキャサリンはパーティーに招待したり、友達に紹介したが、辰男は嫌がった。
会うときはいつも二人だけ、結局辰男にとってキャサリンがアメリカでの唯一の友人だった。
日本に戻ってからも辰男は手紙をくれた。
キャサリンはマギーのように都会へ出ることもなく、故郷で静かに暮らしていた。
そして、突然去年プロポーズされた。
4年前の秋を思い出してもらおう。
キャサリンは故郷のコーヒーショップを部屋に再現することにした。
そして、この考えにわくわくした。
テーブルを動かしながら、マギーのサプライズ・パーティーのことを思い出したりした。
辰男の帰ってくる足音が聞こえた。
キャサリンはドアの前に立ち、辰男を迎えた。
「ハーイ、タツ、イラッシャイマセ」
キャサリンは4年前のようによびかけた。
辰男はカウンターを模したテーブルの前までゆっくりと歩いてきた。
「ばかなことは、やめろ」
そう言うとテーブルを蹴ってひっくり返した。
「NO!!」
辰男は、泣き叫ぶキャサリンを残して足早に部屋に向った。
部屋に入るとかばんをおもいっきりパソコンにたたきつけた。
「ちくしょう」
辰男は泣きながらそうつぶやいた。
プロット・おわり
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