Project40 超大物ジャズミュージシャン

1.アカデミー助演男優賞

劇場でいちばん映画を観たのは中学から高校ぐらいだった。
親からわずかな小遣いをもらうだけで、ほとんどバイトもカツアゲもしなかったので金がない。
だから観たい作品でもロードショーにはまず行かず、隣町の二番館や名画座に来るまで半年くらい待った。
そして交通費を浮かし、安い入場料で、自販機の紙コップのジュース一杯で、2本立てか3本立てを観た。
やっぱり、若いときはエネルギーがありますね。

今じゃとても無理。
だいたい映画館のいすに座るとすぐ眠くなってしまう。そして特にそれに逆らうこともしない。
それ以前に映画館まで行く気力が出ない。今年観たのは「ラストサムライ」1本だけだ。
「ラストサムライ」に行ったのは、当然アカデミー賞にノミネートされた渡辺謙を見るためだ。
渡辺謙は存在感十分だし、悪くないと思うが、すごい!という感じはしなかった。

実は、アカデミー助演男優賞に関連し、ものすごく驚いた経験がある。
映画を観るのに熱心だった頃に話を戻す。
いつもの名画座で「地上より永遠に」という古いアメリカ映画を観ていた。
出演者の中にものすごくうまい小柄な役者がいた。うまいなー誰かなーと思いパンフレットを買った。
そして、役者の名前を見て腰が抜けるほどびっくりした。フランク・シナトラだったのだ。

「地上より永遠に」は第2次世界大戦中の軍隊を舞台にした社会派ドラマである。
日本の真珠湾攻撃直前、ハワイの米軍基地に配属された青年(モンゴメリー・クリフト)の目を通し軍隊の腐敗を描いている。
シナトラは青年の軍隊内の唯一の友人マジオを演じていた。
途中で死んでしまう実にかっこ悪い役だ。これをシナトラは見事に演じていた。

映画を観た当時シナトラは健在で、ショービジネスの王者といった感じの初老の大物歌手だった。
「マイ・ウエイ」を持ち歌とし、ディーン・マーチンやサミー・デービス・JRを子分のように従えていた。
そしてマフィアとの関係が取り沙汰され、強面で保守的なイメージが強かった。
だから彼が社会派ドラマのバイプレイヤーとして、これほどの名演技をしていた事にとても意外感があったのだ。
あらためて、アメリカの、本物の芸人の実力と懐の広さに驚嘆した。
シナトラは、この映画でアカデミー助演男優賞を受賞している。

渡辺謙のノミネートに関連して、日本人俳優として唯一アカデミー賞(助演女優賞)を受賞したナンシー梅木のことがマスコミで取上げられた。
僕は最近、彼女の若い頃をよく知る人物の話を聞いた。

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