Project12 やり投げ警備員
2.投てきのスーパースター
87m60。溝口和洋が1989年に記録したこのやり投げの日本記録はまだ破られていない。
と言うか、80m以上投げたことのある日本人は彼を入れても3人くらいだと思う。
記録したのはアメリカのサンノゼで、投げた後「世界新記録!」と表示された。
ところが、計測し直したら惜しくも6cm足りなかったというエピソードもある。
(個人的には、なんとなくあやしいと思っている。国際大会で6cmも計測ミスするだろうか?ワールドカップでも変な判定が多かったが...)
彼の身長は1m80ぐらいだが、やり投げ選手としては決して大きくないらしい。
では、その体格的不利を体の回転やひねりを重視したフォームでカバーするかと思うとさにあらず。
なんかだか、バネ仕掛けのように一気に腕を前に振り出すダイナミックなフォームだ。素人目にも肩を痛めるだろうなと思えた。
野球にしろゴルフにしろ遠くへ飛ばす理論はいろいろあるが、要するにエネルギーを無駄なくボールに伝えろと言ってるわけで、力任せに引っぱたけとは教えない。
でも、溝口選手や西武のカブレラを見ているとそれが当てはまらないのかなあと思ってしまう。
どう見ても、力任せに投げたり、打ったりしてる。それで、一番遠くに飛ばすのだから。
※ただし、やり投げ世界記録保持者のゼレズニーは流れるようなスムーズなフォームです。参考までに。
※溝口選手のフォームも専門家から見れば理にかなった美しいフォームなのかも。(でも、やっぱり力任せに見える...)
最近の陸上投てきのスターと言えばご存知ハンマー投げの室伏広治だが、彼はあちこちのインタビューで溝口の影響を語っている。
学生時代に記録が伸び悩んでいたとき、溝口と練習する機会を得た。
そのときに溝口の限界を超えた練習量を見て開眼したみたいな内容だった。
溝口は精神力で限界を超えろとアドバイスしたようだ。
普通に考えたら映画のヒーローのモデルとしては溝口和洋より室伏広治のほうがふさわしい。
室伏は、ルックスが良く、育ちが良く、世界的な実力を持ち、強靭な肉体を持っている。
でも、彼からは映画を作りたいというモチベーションが生まれてこない。
ところが溝口を見たとき、彼をモデルにした映画を作らなければという強烈な欲求、いや使命感を感じた。
この差はどこから来るのか。
それは、溝口が”業”を背負ったスポーツ選手だからです。
つづく →次へ
戻る