Project1 おばあちゃんのレコード

5.プロジェクト始動!!

今年のはじめに、おばあちゃんのレコードの手がかりを探すべく、ある場所に向かった。
中央線に乗り換え、お茶の水の駅で下車すると、神保町に向かって坂を下った。
何軒も立ち並ぶ楽器屋のずっと変わらない活気が嬉しい。
ただ、景気の良かった頃はもっとスキー用品の店が多かった気がする。その分人も多かったような。

しばらくすると神田古書センターに着いた。
ここの8階には二十年程前に一世風靡した芳賀書店がある。
男が一人で古書センターのエレベーターに乗れば芳賀書店が目的だと思われるだろうな。
事実、一人でやって来て、僕と一緒にエレベータに乗った男は8階で降りた。女神を求めて。

僕は9階まで上がった。そこには、富士レコード社がある。
今、普通のレコード店で売っているのはCDだが、一昔前はLP(アルバム)とEP(シングル)だった。
LPレコードはDJがスクラッチに使うので、まだわりに知られている。大きなジャケットをアートとして楽しむ人もいる。
おばあちゃんの時代はさらに古いSPという規格である。
富士レコード社は中古のSPレコードの店として知られているのだ。

店内は思ったより、広く、明るく、ジャズのBGMが流れていた。閉店時間が近いこともあり他に客はいなかった。
SPはきれいに分類されて並べてあった。大正時代の琵琶のレコードも何枚かある。
それだけだ。とくに何かが見つかったわけではない。僕は、店員に何も言わずに店を後にした。
BGMはビル・エバンスの「ワルツ・フォー・デビー」に変わっていた。

僕は確認したかったのだ、SPに関心を持つ人がまだいることを。インターネットの中でなく実物として。
そして、日本のどこかにおばあちゃんのレコードがあるのを確信できた。
だけど、まだ先は遠い。
おばあちゃんのレコードのことは何もわかっていない。レコード会社は?曲目は?芸名を使っていたのか?
けれども、そろそろ長年の課題に決着をつける時が来たようだ。
プロジェクトを始動させよう。

※皆様の情報をお待ちしています。おばあちゃんのレコード探しにご協力下さい。→情報募集へ

つづく

        戻る