Project23 サインはV

1.いつまでも

今はアメリカとイラクの戦争がテレビ放送の中心だ。通常の番組を変更しても新しい情報を伝えている。
おかげで僕もささやかながら被害を受けた。
いま撮影している映画「ナイトステップ」を取材をしてくれたRKB毎日放送「生きる×2」第1回の放送が今日あった。
僕の住んでいる東京近郊ではテレビ朝日で予定通り放送された。
が、番組の主役・中野章三氏(中野ブラザーズ・弟)の地元福岡では、戦争のニュースのため放送されなかったそうだ。

すこし前は、テレビの中心は北朝鮮と帰国した拉致被害者だった(その前はノーベル賞の田中さん)。
北朝鮮のテレビの人工的、演劇的な番組の映像と共に、蓮池さん夫婦、地村さん夫婦、曽我ひとみさんは連日スターのようにその動向が報道された。
そしてまた、それを見たくなってしまうのが人情というものだ。

そんな報道のなかで一番好きだったのが、曽我ひとみさんが歌手の森昌子と会ったシーンだ。
北朝鮮へ連れて行かれる前の少女時代に大ファンであこがれていたスター。
その気持ちは24年間の波瀾の時期を経ても変わっていなかった。
曽我さんはいつも伏目がちで、友人と会った時に笑っても嬉しそうに見えないが、このときは本当に嬉しそうで、感激しているのが伝わって来た。

同じような感情がひしひしと伝わって来たのが、先日日本橋三越で開催された吉永小百合展だ。
ただの展示会に毎日1万人以上の人が訪れ新記録を樹立、大騒ぎになっていた。
映像でみるとほとんどが50代、60台の人たちである。
ほとんど断言していいが、彼らの9割は去年1年間、百貨店へは行っていないし、映画館へ足を運んでいないと思う。

若く、多感な時期にテレビや映画のスターは、実生活での苦しい現実や乾いた心に潤いを与えてくれる。
年を重ね、夢見る頃を過ぎても、そのとき好きだったスターに対する気持ちはずっと変わらない。
そして、あこがれに加えて、時代を共に生きた共感のような感情も生まれて来るのかもしれない。
今なら松浦亜弥あたりは、ファンのローティーンの少女の心の中にずっと残ってゆくだろう。

今は無くなってしまったが、大井武蔵野館という映画館があった。
古い日本映画を3本立てでよく上映していた。
どちらかと言えばマニアックなその映画館で一番客が入った作品は「サインはV」だそうだ。
えっ、サインはV?

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