Project12 やり投げ警備員

5.思わず...。

さて溝口和洋だが、人生のすべてがやり投げであるように見える。
全盛時代、競技中もインタビューの受け答えでも、いつも怒ったようにしかめっ面をしていた。
NHK教育テレビのスポーツ教室でやり投げの講師をやったときもやはり一緒だった(しかし、なんでこんな番組見てたのかな)。
一つの技術を追求していると、人はだいたいこんな風になるもんだ。

ちょっと意外と言うか、微笑ましい一面もある。
わりと最近だが、テレビの「スポーツマンNO1決定戦」で跳び箱(モンスターボックス)に挑戦していた。
そのとき、実況の古館伊知郎が「高校時代は指人形部と将棋部に所属」と言っていた。
うーん、ますます美味しいキャラクターだ。

懸命にやり投げに打ち込んでいる彼を見て、意地悪な僕はこう考えてしまった。
「溝口和洋からやり投げを取ったらいったい何が残るだろう?」
しばらく考えて出した答えはこうだ。
「溝口和洋からやり投げを取っても、やっぱりやり投げしか残らない」

競技生活を送っている溝口選手が、何らかの理由でやり投げを禁じられたらどうなるか?
おそらく、長いものを見ると思わず投げたくなってしまうのではないか?
こういうことは、時々耳にする。
デパートのエレベーターガールが、電車に乗ってドアのところに立っていて、ドアが開いたときに思わずおじぎをしてしまったとか、
風俗店に勤めているのを彼氏に隠している女性が、思わず彼氏にも濃厚なサービスをしてしまったとか、
相撲の中継ばかりやってるアナウンサーが、郷土紹介の番組で、つい相撲の話題に行ってしまったりとか。

そこで、プロットを考えた。
自分とはまったく関係ないスキャンダルで陸上界を追われた溝口が警備員に転身する。
長いものを思わず投げてしまって騒ぎも起こすが、最後は得意のやり投げで事件を解決する。

そして、このプロットを通っていたシナリオ教室(Project11参照)に持っていった。

つづく    →次へ

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