Project11 プール男

1.六本木の夜

80年代の終わり頃から90年代の初めにかけて、六本木のシナリオ教室に通っていた。
ちょうどバブルの時期に毎週夜の六本木に行ったわけだが、やってることはえらく地味だった。
途中、中断もあったりしたが、マンガ原作者としても有名なO先生のゼミに落ち着いた。

ゼミには老若男女、実に様々な人が来ていた。
定年後のおじいさん、50歳台の奥様、バブリーな人妻、色っぽい人妻、太った人妻、刑事ドラマを書きたい女、
アニメ好きの女、シナリオ大好き男、ちょっといい男、おたくの女子大生、若いサラリーマン、そんなとこかな。
そして、みんな普通の人だった。これは僕には好都合だった。

僕は自分の描こうとする世界が普通の人に受け入れられるかに関心があったのだ。
ゼミは、各自が家で書いてきたプロットを批評し合う形が多かった。
「プール男」は、「プール・留守番電話・日本」の三題話の課題として書いた。
そして、普通の人たちにえらく評判がよかった。
50歳台の奥様は、それまで僕に変によそよそしかったが、これを書いてきてからよく話すようになった。

留守番電話は当時普及し始めたころで、まだ新しい機能だった。
そして、携帯電話はほとんど皆無だった。まして電子メールなどは一般の人は誰も知らなかった。
外部との連絡手段として電話の持つ意味は今よりも重かった気がする。
「プール男」はその頃の話である。

プロットの内容は次回。

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